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2025/04/21  [PR]
 

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 日和

@1
続くよ。多分・・・鬼太。長い。



















「黙っていれば、悪いようにはしませんよ」

抜かった。完全に失敗した。飛鳥組組長ともあろう者が情けない。あろうことか移動中気分転換に少し外に出た隙に捕まってしまうなんて。狙われてる事は分かっていたのに。
頭が痛い。
「同乗していた少年には何もしていませんよ。伝言を頼みましたので」
調子丸は無事なようだ。
目の前の男は冷たい拳銃を私に突き付けた侭淡々と続ける。無感動なまなざしが突き刺さる。
「僕らもまさかまともなボディガード一人付けてないのには驚きましたよ。いつもは茶髪の方や金髪の方、いましたからね」
くそ。見られてた。こうなると現在妹子や竹中さんたちも今危ないってことか。
「狙われていた事に気付いていた筈ですよね、」
頭が痛い。ガンガンする。
「どうして、ひとりで、」
嫌だ嫌だ嫌だ。思い出したくない。私だってひとりでなんて居たくなかった!
どんな時も絶対守ってくれるあいつと一緒に居たかった!
もし一緒だったら、妹子は喧嘩してもしていなくても、絶対守ってくれたのに。
私が妹子から勝手に離れたから、私は捕まり、生命の危機。
なんて自業自得。
涙が伝う。喉の奥で嗚咽する。
「鬼男さん、」
高い声が部屋に響く。女性の声。私がそちらを見ると薄暗い入り口に一人の女性もしくは少女が猫を抱いて立っていた。
「失礼しますね…私は夕子といいます、ジャージさん」
彼女は見るからに色艶のない髪を気にする様子もなく、暗くても分かる白いワンピースを着て、白い手足を惜しげもなく外気に晒し、フラリと近付いて来た。
表情はない。
「拘束を解け、とのこと」
「………」
男が拳銃を腰に着けたホルスターに仕舞い、私の手足を縛っていた紐と猿轡を解いた。
自由になった所で何か突破口がある訳ではない。私には目の前の男を倒す程の力はないだろうし、夕子と名乗った白ワンピースも見た所男の仲間。只物ではないのだろう。
そして私はここが何処かも分からない。この部屋で目隠しを取られるまでは拉致されたことさえ十分に理解できなかったのだ仕方ない。
「何か言いたげですね」
「…君達は、誰だ」
壁に体重を預けたまま、上目で彼を見る。
髪はくすんだ金、肌は黒めで猫のような目をぎらつかせている。それだけならまだしも、その身から染み出る雰囲気さえ人間離れしている。
「僕は名を鬼男といいます」
彼の容貌と気配はまさにその名の通り、鬼。なんて嫌味だ。
「天獄組組長、閻魔が秘書を務めております」
聞いたことがある。裏世界の新勢力、天獄組。組長は閻魔、通称閻魔大王。
人が閻魔大王様と鬼に敵う訳がないってかこのやろう。本当嫌味ったらしい。
鬼男はさりげなく私を見下し、口元に笑みを浮かべ、言った。

「聖徳太子さん…あなたの飛鳥組、壊させていただきます」

「な…」
私が噛み付く前に鬼男の足が私の頭を掠めてコンクリート打ちっぱなしの壁を強く蹴った。
どこかでパラパラと壁が崩れる音。
「気に食わないんですよ」
鬼男は壁に足を立てたままニヒルな微笑みで私に顔を近付けた。
「身の程も知らず大王と競おうだの並び立とうだのする人間が居るのが、気に食わない」
「そんなの、自分勝手だ」
「なんとでも」
鼻で笑い彼は私から離れた。それを見て夕子といった幽霊のような白ワンピース女が口を開いた。
「じゃあジャージさん、あなたはどう違うんですか」
みじろいでしまう。
「あなただって裏世界に属する人。傷付けて殺して虐げて来た筈です。なのに善い感情だけ前面に押し出して、私たちを非難する等…卑怯」
続けて言った。
「なんて、忌まわしい」
道理だ。
私は人を、殺して晒していたぶって、組を大きくして来た。
彼らはそれを率直に表現しているだけなのだ。別に彼らが奇異な訳ではなく、私が愚かしいのだ。
「でも私は私利私欲になんて、走ってない」
「それは奇遇、僕もです」
せせら笑うように鬼男が言う。
「ただただ大王の為に、殺す嬲る苛む。その大王は僕らの後ろ盾で敵対する勢力を平らげる。あなたの組だって同じ仕組みでしょう」
確かにそうだ。だがその閻魔大王とやらはどれほどの力量でもって鬼男を支配しているのか。
第一、縦社会に不満を持つ者はわざわざ自分も含まれるそれを例に挙げたりしないだろう。
とすればこの鬼男という男、余程閻魔大王に陶酔しているのだろう。そんな忠誠心、私も欲しくなってしまう。
妹子がいるけれど、何か違うだろう、あいつは。鬼男は憎らしい程に純粋だ。
この男をして、こうまで崇拝させる者とは一体どのような男だろう。

「お目覚めかい?」
中国風な着物。
ふざけた帽子。
「大王!」
ぱさついた黒髪。
病人のような白さ。
「やあ太子君はじめまして。かなあ?私が天獄組組長閻魔大王」
高い声。
薄ら笑い。
軽薄な雰囲気。
こんな奴が、鬼男を支配したる人間なのか。
「私は、」
鬼男の険しい視線を感じるが嫌ではない。
構わずふざけた風貌の男に叫ぶ。
「君が嫌いだ!」
あらぬ方向を向いていた猫女の視線が私に注がれる。
鬼男がホルスターに手をやる。
「聖徳太子」
通り名を呼ばれはっとし閻魔大王の表情を伺うと、笑みを深くして、うふ。
気味悪く、哂う。


「地獄ね」








ブラッ









しつこく続くよ!
閻魔の服は宋代の裁判官の服だけれど、太子は知らんだろうな
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