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2025/04/20  [PR]
 

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影が長く伸びる。気温は下がり始めている。時計は五時の鐘を打つ。どこもかしこも赤色を染み出している。
焼け付く色があの日の思慕を掻き返す。
あまりの短さと鮮烈な赤さをもって立ち現れた夏の熱さはまだ気持ちを揺すぶるし、今の立場を思うと目の前が眩んでしまうけど、思い出す気持ちはいとおしい。
嘘つきのぼくの頭にそんなふうに湧き上がる情感が正しいのか許されるかわからないから誰か認めてゆるしてよ。きみがぼくと同じように生きてくれなくてさみしい気持ちをゆるしてよ。きみの生きる時間に適わなくてかなしい気持ちもゆるしてよ。
掲示しなかった選択肢を、ぼくを選んでくれれば、寂しいことも哀しいことも認める訳にいかない感情もなかったよね。
最後の夜にきみの手を掴むこともしなかったぼくの自重に気づく人はいないのだけど、悔やむばかりのぼくは愚かしい。
「下らない。おまえの目は弱き者を見ているのだ。それは恋慕じゃない。憤りの変じた憐れみだ。一時おまえを凌いだ力が、折るもたやすい人間として生きているからだ。弟だっておまえのことを気付きもしない。」
そうやって追い詰めてくる言葉もぼくを完全に打ちのめすには足りないからから弱ってしまう。
振り返らないきみの背を追いかけて一歩踏み出す度に纏わりつく失望もまだぼくに光をちらつかせる。それはきみが通学路を変えたり、歩みを止めて空を仰いだりするごとに目の前でまたたく身の程知らずな期待。
きみは背が伸びた。今はどのくらいの近さで向き合えるのか。
未だ触れたことのない指はどれほど輝きを増したのか。
きみは道を逸れた。追ってぼくは足の舵を切った。
そのとき視界が拉げた。目の前は闇だった。足を踏み出す先が見つからなかった。どちらへいけばいいの。きみにぼくを知ってもらうことは唯一の約定の放棄で、そんなことをするぼくがきみに近づくことはできない。
きみを知ってもぼくのほうが知られたら触れることはできない。きみの後を追えば追うほどきみから遠のくということだ。どうしようもない泥濘はぼくを放さない。
鐘は止んで空は陰る。ぼくも彼に背を向ける。
ぼくにただひとつ与えられたナオヤくんとの約束事は「きみに接触しない」こと。ほかにはだれもなにも教えてくれなかったよ。それを守っている今のぼくにやましいことなんてひとつもないはずなのにぼくは怖れている。いつかぼくはきみの背に触れたいと思ってしまっているから。でなければ自ら柵に入ることなどしないよ。
もう暗くなってしまった空は誰を引き留めることもない。
できることならあの夏にかえりたい。
「ロキ」
やわらかい声を追うように背に触れる手を感じた。
きみの幼い視線が今ぼくに向けられていてそれを望んでいるのなら、ぼくは今きみを振り返る。
強大な罪悪感に体が凍てつくより早くきみを抱き締めたいぼくを受け留めてね。
恐れることは何もないって、きみが一番ぼくを望んでいるって、今、言って。



0地点






主題的なものがわかりづらかった。
チャラ男よかったねということでハッピーエンドのつもり。が、つづきがふたつ浮かんだ。どっちにしろ蛇足ですけどー。
1、ネコミミ「会いたかった…」
2、ネコミミ「つきまとうな!」

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