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2025/04/21  [PR]
 

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彼は自らの弟への愛情を信じている。
盲信は彼の適応力を削いできた。知っていて、彼を生きたまま奪いたくてあの過信を取り去るために彼を傷つけてきたから彼はいつでもぼくを警戒するようになった。きみをあいしているから傷つけもする、そんな言い訳が、ひとつも疑いを抱かず弟を求めているきみに届くわけなかったね。
「弟を魔王にして、」
懸念のない晴れやかな眼で彼は語るけどぼくは湧き上がる衝動を抑えることができない。いつだってそう。
「どうしてまだそんな夢を見ているの。きみに未来はないんだよ、もっと生きたいと言ってよ誰一人きみをとがめないよ」
きみが怯んだその一瞬でぼくは壊されてしまいそう。きみを傷つけることは正しくぼく自身を傷つけることになるのだと思い知って絶望してその場から逃げても次の日にはきみの扉の前で反省の言葉を並べ立て互いに心にもない謝罪を口にしては泣いた。
きみは掛け替えが利かないのだ。
諍いもできない今どんな記憶もいとおしい。
赤い朝が窓辺を色付け酔いと陰りを帯びた君の体を浮かす。突っ伏した顔は黒い羽織りに溺れている。未だ此処に命はあるのか、君と内容がかけ離れているぼくにその判断が付かないのは罪だろうか。
「ナオヤくん、朝だよ」
触れた肩は紛れもなく君のかたちで息をしている。手を取ると跳ね上がった顔が強ばっていた。
「こわさないで」
小さな声だった。あのときもそのずっと前のいつかも思いつきで傷つけているのではないのだけど、つぐないと言い訳をし続けている。
循環しない行き詰まりの果てでぼくはきみに爪痕をつけるけど滲んだ血に手を引っ込めて、心を痛めながら再生した白い肌をまた傷つけたがっている。ケロイドになりさえしないのに、そういう存在であることを選んだのはぼくだ。
ぼくはきみのそばにいたいだけできみが望まないなら知りたいとも癒したいとも思わない。
指を放したら君はもう冷静に乾き切った唇を舐めるのだった。
「弟は俺を選ばなかったが、引き込めるものなら今生のいつになっても構わない」
「なんでなの、もう彼は決定的に道を違えたよ」
「俺は、弟を、愛しているから」
死ねよ。
だから、ああしたいこうしたいとか浅ましいんだって。そもそも弟は君の物じゃない。その考え方が呪われたんじゃないの。どの口で生きたいなんて言うの。ぜんぶにおかしいと言いたい。こう思うぼくの方が可笑しいのか。それでもいい。いつもと同じ。いま再びその自信を打ち崩したい気持ちに身を委せてぼくは口を開く。
「きみがあの子を愛することは復讐の手段なの?そういうのって意味ないし、」
ソファに押し付けられたときは何があったのかわからなかった。
それでも血管の透ける眼が冷え切っていたからこの子は怒っているのだなと思った。口が滑ったのだとしても間違えたつもりはないから口は閉ざしたままにしたかったけど、ひとつだけ言葉にしてみた「あいしてるよ、ナオヤくん」。愛しているから愛して。こんな簡単な交換もきみが相手だと何十年も掛かっちゃうね。
彼は自分で服を脱いだ。脚が触れると現実が降ってきたけどもう怖くなかった。彼が肌を合わせると溶けて混ざってもう離れないのではないのかと思われた。
きみの意思が散乱している。どこまでが仕事で、どこからが私情だろう。したいことをしてやりたいようにやってよ。自分で作った罠からいつ抜け出してくれるの。待っているのさ。
もがけばもっと深く沈められる。たぶん彼の指が体をほどきつつ口を擦り合わせるとき以上しあわせはなくて、同時にこの人はいつか死ぬんだというナイフのような真実が胸を掠める。それもあの中指によって瞬く間に消されたけど。
余計なことを考える意識は彼が遠くまで運んで行く。神経は奪わないで。背骨と肋骨の感触をもっとよく知りたい。
細長い指はぼくを掻き乱すばかり。繊細な動きでぼくをおかしくしないで。些細な素振りでぼくを猥らにしないで。一寸贅沢を言わせてよ知ってる分かってるもう行き詰まっているだからこうして酔っている。
昴りの最中に彼はただ一度だけ歯を突き立てた。そのまま動脈を噛み切って赤くなったぼくの血を見てよと言いたかったけどその時急に意識を引き上げられてもうぼくのものとは思えない声にしかならなかった。
ぼくが彼を傷つけたことに変わりはない。彼はそれでもぼくに触れたのだ。
ぼくはただ壊れそうなきみを愛でていたのであって、けして壊してしまいたいとは思っちゃいないって、言わないとわからないのかもしれない。でも、それならそのままでいい。ぼくは言い訳しないよ。きみにつたわらない気持ちを伝えたところで傷を受けるのは最後きみだから。ぼくの傷つくきもちはただの妄想だねぼくは平気できみを慰めるからやめて悲しい目をしないで。
ぼくなど人間の体をしていても彼と同じ心地になれはしない。涙さえ滲むけど自分でも何が悲しいのかむしろ嬉しいのかそれすらわからない。
本当はちっとも傷ついてない泣くことない明日から笑っておどけてあげなくちゃ。
だからきみも笑ってそばにいることを許しておねがいだから問いたださないでそばにいたいの。きみの意志を二の次にしてただその存在の隣にいたいのに。
肌の切れ目で息を言葉にして吐き出す、「でも本当にキミを復讐の念や使命感などに奪われたくないの。だからキミの執着が下らなく見えるの。ボクにとって大切なのはキミの復讐じゃくて、キミだからさ」。
きみは青ざめて眼のみ赤く燃え立つ。きみがぼくの首を絞めてきたみたいにぼくもきみを苛みたいよ。いつもと同じに笑ったらきみは泣きそうに唇を歪めた。そんなポーズも許すさ。ぼくなら一緒にいて大丈夫だよ、何度だってキスをしてあげるよ。
どうせまた直ぐぼくの知らないところで笑うんでしょう。
構わないさ。きみを咎めたぼくが正しいって思い知るときが来るから。
きみがあの子を愛することは嫌じゃない。その工程できみが癒えない傷を負うのが嫌なのだ。愛に疑いを向けないかわり、その歪みを曲解して、周囲の全てを疑いの眼で見るのが不服なのだ。ぼくのきもちだって、きみの中に形を変えず正しく留まるかといったら、危うい。
ぼくしか見ないでいれば拙くても人の幸せに近いものに触ることができたのに。きみは思い知っても思い直すことはないだろうけどね。
どうしようもない指先だけが未だ熱の真ん中でのた打ち回っている。
ぼくらはどこを目指せばいいの。明日は何処かに見えますか?計算できるものなら教えてよ。
さあ、

この世の限り




















ナオチャラとんこつ味

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