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2025/04/23  [PR]
 

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「あれ、魔王様は?」
「いない」

「どうして?」
「さて」
口先でいなせば紫は冷たく青みを帯びる。
自分が不安になることを思い出したくない。関係ないことを言いたくない。俺は今ロキとだけ居たい。
「知っているよ。また戦わせているんでしょ。なのにきみは安全地帯にいる」
俺はそれには応えず羽織りを取り上げて羽織った。
「キミはさ、なんでも思い通りになるとおもってるんだろうけどさ」
底暗い声にはっとしたが目を向ける間にひとつの影が視界を塞いでしまっていた。
「それでボクの気持ちだって推し量って御しきることができるっていうの?それが簡単だっていうの?キミの弟は魔王になってしまったよ?この期に及んでボクがキミになにを期待していると思ってるの?キミがボクになにをしてくれるの?」
狂気じみて捲し立てると灰色の眼光を此方へ向けた。
「ふざけんな」
そんな言葉に気圧される俺ではないのに睨み返す筈の目は機能しない。かと言って物理的にどうすることもできない。
あの眼差しは俺の全く知らないような刺々しい冬を湛え、いつも感じていた言葉との薄ら寒い剥離も見つからない。
これが本性なら俺はどのように受け入れれば善い。拒んでいるのではない。どのように身を委ねたらいいのか分からぬから今その目を見られないのだ。真摯な素振りなどやめてほしい。惑わされてしまう。嘘を拒まないのは、すでに流すのでなく鵜呑みにしているから。
きつく拳を固めていると、手首を封じ込めていた指がふいにゆるんだ。
「じゃあ、そう思ってもキミのそばにいたいボクはどうすればいいの、」


黒い部屋



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