「きみは痛みを感じないの?」
「痛みっていうのは、救世主の成立にもオレの成立にも関係ないよ」
きみはとてもやさしい顔をして続けた。
「この王座は沢山を踏みつけにしている。だからオレはここに座り続ける。わかっているでしょ」
「自らの足で踏みつけて来たくせに」
「そう。オレは殺してきたよ。だからこそ動けない。殺し続ける」
「殺すことをなんとも思っていないくせに」
「そうだね。でも、殺すという事実に感情は付随しない。関係ないよ。・・・どうして何度もそんなことを訊くの」
きみはひとつも動じることなくまばたきをする。あどけない頬は隈無く虚構の膜を張っている。ゆるぎない外套は淀みなく真実の白を纏っている。青い目は奇跡のよう。青い髪は夢か嘘のよう。純白の指は永遠のよう。本当は誰一人殺していないと優しく耳打ちしてくれたなら信じるよ。もう自分の感覚など信じられないし。
「じゃあ愛することはきみにとってきみの感情の有無を問わず実行できるものですか」
現実はひどく心許なくて手探りだよ。ぼくの感覚まで見出して、愛する素振りをしてくれればちゃんと実感できるはずだから、ねえぼくにぼくをかえしてよ。怖れていたことばかりを実現させないで。こんな体じゃ足りないかも。きみを受け留めて受け入れて混ぜ込んでしまいたい。
「試してみないと解らないよ」
僕にはなお曖昧に微笑むきみのほか何も見えないのだけどきみはその笑顔の向こうでどんな感情を抱いているの。なにひとつわからない。
「なら目の前にいるぼくを見てください」
ぼくを触って。その指の冷たさでぼくを確かめて。
それが他の何より欲しいもの。だから本当はそれだけあれば何も要らないのだと今自覚できたよ。
人殺しに感情はないこと、人殺しを理由に人殺しをやめないこと、それらは矛盾している。気づいている。きみは人殺しを錠前として自分を閉じこめた。自分が其処に立ち続ける理由ににした。人殺しを罪と認識しているからそうなるのでしょう。それとも人殺しはきみの認識をすら超越した事象で、解って敢えて関係のないものとするのか。それともすべてどうでもいいの?
ここまで来てようやくきみのことを考えられるよ。でもきみの頭の中なんて今やひとつもわからないよ。思い当たる矛盾が乱すのはぼくのほう。そんなものに拘泥してきみに触れることを諦めたりしない。
ただきみはそこから動く気がないという思し召しは分かったから、足下に体を投げ出す僕を手違いなく早急に陵辱してください。
暴き立てて曝し尽くして擦り減らしてください。僕なら壊れない。
僕なら壊れないから。
きみと殺し合うこともないしきみを利用するつもりもないしきみを閉じこめることもないしきみを縛り付けることもないしきみを矯正することもないしきみを憎むこともないしきみに殺されることもないし、
きみを壊すこともないから。
それにきみの手がぼくを殺すならそれは道理だしきみの目がぼくを締めるならそれは条理だ。ぼくに不安を植え付けたのはあなたなんです。蔓延する不安ごとぼくを飲み込んでください。
だんだん内へこもっていく表現で示したかったのは、主人公しかいないチャラ男と段々下手になるチャラ男。
内容はなんにも考えてなかったけどナオヤさんいとしい
ナオヤさん壊したら主人公壊れてしまうんだよ。
めずらしくどっかよわい主人公だ・・・!
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