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2009/12/22)
☆ 主←アツ
色が付いて、なんだか無機質な感じがする爪が横から伸びてきて俺の頬をピタッと挟んだ。
「アツロウじゃん」
手に手を被せて剥がそうとするとビクッと指が引き吊り、後ろに引っ込んだ。
追うように振り返ると奴はこっちから目を離し、異邦めいた目の色で自らの指先を物憂げに見つめていた。
かと思うと盛大に溜め息を吐いた。
「やー、ちゃった…。やっちゃったよアツロウ」
どうしたと視線の行く先を覗き込むと、剥がれかけた爪の色があった。
乾ききっていない状態で人に自らちょっかいかけてしまう奴があるか。コラ。
「いつもは大丈夫なのになあ」
「じゃあ今日も気にしろ」
「んーいつもは気にしてるって訳じゃなくて。ていうか、」
爪を引っ掻きながら曖昧に笑って言った。
「自分で塗って乾かすのって、案外大変なんだね」
親友の表情を垣間見ると、一心に爪色を剥ぐばかりだった。
どうして俺が入れないような神秘の壁を、俺が知らない内に増やしてしまうんだ。
異邦の瞳を覗いても曖昧に微笑むばかりのこの少年は誰だろうかという頭の浅いところに浮かんだ疑問を無理矢理掻き消し再会を喜ぶ笑顔を繕った。
ミスティモーブ
激短。因みにタイトルは某化粧品メーカーのマニキュアの色です。紫色です。
青じゃないのかよ!
というツッコミができたあなたは素敵です。
というか、実は青とは言ってないんだよね~。
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