ユズルート微グロ
ぐしゅりという音をもって悪魔を滅したのは白く細い指。
しなやかな指の束が意志持つ生き物のようにうねり、掘り返し、突き抜け、断末魔の血潮を浴び真っ赤に照るさまは、至高のなまめかしさで見るものを魅了するのです。
ボオッとその生き物の波打ちを見ていたロキは肉の塊が消滅しないのを認め今彼に絡みつく血糊が人間の物らしいと気づき、この美しい生き物にへばりつく醜悪な物質が、美しさを汚さんとする悪臭が、未だ存在し、また美しい生き物に触れたことにより空いた洞穴が真っ黒な口を開け笑っているのに短気を起こし、笑う肉塊を塵も残さず破壊してしまいました。
彼の様子を見ていたアマテラスはうっそりと、しかし輝く笑みで「かわいいひと」と呟き口端で笑いましたが、ロキは金髪を振り乱して少年の後を追い死肉の海をずんずんと進んで行きます。
そこでひと匙の魔力を感じたアマテラスはその場に留まり、後ろに感ずる気配を光で照らしてやると、眩しいそうに目を細める男の姿がありました。
その格好といったら汚れに汚れ、赤く黒く。白い髪も白い肌も彼の目よりずっと汚き色で彩られ、跛を引き、裸足が目に痛く、無数の傷が痛むのかたえず顔をしかめていました。
「おいでなさい、直哉」
アマテラスは彼に向かって両腕を開き、自らの下へ引き寄せると、傷を癒やし衣服を清めてやりました。
直哉は畏縮しているのか単に力が出ぬのか、光に包まれぢっとしていました。
「おまえは私を厭わぬのですか」
「…他宗教と仲良くしたり、世界を滅ぼしかけるような女を怨んでもな」
「ふふ、そんなことまでよく知っていますね」
「追放をするのは、気に食わんが」
「礼を失したり家を汚すような弟たちにはしますけれどね」
「だが、おまえは矮小な人間を…俺を、裁いたり呪ったりしないのだろう。だから俺は、あなたに反抗できない」
それはすべて言うとおり。アマテラスにしてみれば、人は人で勝手にやっていればよかったのです。
彼女は生きる人間に矯正などしないのです。私たちは私たち。人間は人間。大切なのはそこにある、営み。アマテラスは度々そういうことを思うのです。
そういう意味ではアマテラスの立ち位置は少々可笑しいのかもしれませんが、それについて言及すると長いので略すのですが、つまりアマテラスのそういうスタンスこそ直哉の気に入るところだったのです。
直哉はしばらくそのまま光輝の中にその衰弱した身体をたゆたわせていましたが、やおら体を動かすと、地に足を付き、縦横無尽に繰り広がる殺戮の痕に降り立ちました。
アマテラスの清き光を受け、妙に尖りのないツヤを、或いはもう乾いたツヤを、晒す、血液。
酸化したソレの鉄臭いこと。
「あいつがやったとは思えんな」
「そうでしょう。コレらはあの子とロキによる惨状です」
「ロキ、だと…」
「意外と言いたげですね」
「…ロキがこんなことをするものか…?」
「そうでしょう。ココに理性はありません。あるのは死骸のみですから。 おまえはロキが本能を露出することが信じ難いのでしょう、直哉」
「…その通りだ。そして、それが本当なら、ロキが理性を忘れるほど、あいつに執心しているということになる。俺には、それが信じられん」
「信じなくても結構。おまえがここまで生き延びた以上、いづれあの子に会うでしょうからね」
「…俺は、あいつを魔王にすることを、諦めてはいない」
「私に言った所で何にもなりはしませんよ。 既に察しているかも知れませんが、しかし、そこには危険がありますね?」
「あいつの精神のことなら危惧している」
「そう。善かった。おまえが危機感を持っていなかったらもう如何にもできないですからね。 けれど、まあ、あの子は正常です」
「そうか、それなら安心だ」
「正常が過ぎて、異常なくらいです。 そもそも以前と比べ周りの環境が限りなく異常な状態で、あの子だけ変わらず正常というのはおかしいじゃありませんか。 この環境が日常になったら、変わらずにいるあの子のほうが異常になるのが道理ではあります」
直哉はアマテラスを見上げ、体は癒えたというのに死のように疲れ果てた顔をしました。
アマテラスは哀れに思いました。
この男さえこの現実に、打ちひしがれ、弱り、重き身を引き摺っているのです。
彼さえここまで堕ちるひどい惨状の真中で私に振り向いて変わらぬ笑顔を咲かせるあの少年は、紛れもなく、確実に異常なのだ。と、アマテラスはその時、静かに気付きました。
そして最後に、直哉の先程の言葉を思い出し、彼を試すことも含意して、ひとつの問い掛けをすることを決めました。
「直哉。おまえは、ロキがあの子に追い縋り本能が儘、無計画に死骸の山を築いたことを、信じられないと言いましたね。
本当の所、信じられないのではなく、信じたくないだけなのではないの?」
直哉は聞いていたのでしょうか、少し身じろぐとアマテラスの方を顧みることもなく身を翻して、その姿を暗い方へと消しました。
天照らす者の光届かぬ所などないというのに。
さて、問の答なら、未だ知る者は皆無です。
直哉が悪魔の変容を信じたくない所以は、少年への独占欲と悪魔への偏執狂のどちらなのか、問うたアマテラスにしても如何でもよいことであり、彼女に大切なのは少年の行方唯一つでありました。
ネクローシス
アマテラスが熱いですね。
ユズルートのナオヤが、コンプ暴走させて楽勝と思いきや、ほうほうのていで逃げ延びたという妄想も熱い。
アツロウとかどこ行ったん。 ねえ
ぐしゅりという音をもって悪魔を滅したのは白く細い指。
しなやかな指の束が意志持つ生き物のようにうねり、掘り返し、突き抜け、断末魔の血潮を浴び真っ赤に照るさまは、至高のなまめかしさで見るものを魅了するのです。
ボオッとその生き物の波打ちを見ていたロキは肉の塊が消滅しないのを認め今彼に絡みつく血糊が人間の物らしいと気づき、この美しい生き物にへばりつく醜悪な物質が、美しさを汚さんとする悪臭が、未だ存在し、また美しい生き物に触れたことにより空いた洞穴が真っ黒な口を開け笑っているのに短気を起こし、笑う肉塊を塵も残さず破壊してしまいました。
彼の様子を見ていたアマテラスはうっそりと、しかし輝く笑みで「かわいいひと」と呟き口端で笑いましたが、ロキは金髪を振り乱して少年の後を追い死肉の海をずんずんと進んで行きます。
そこでひと匙の魔力を感じたアマテラスはその場に留まり、後ろに感ずる気配を光で照らしてやると、眩しいそうに目を細める男の姿がありました。
その格好といったら汚れに汚れ、赤く黒く。白い髪も白い肌も彼の目よりずっと汚き色で彩られ、跛を引き、裸足が目に痛く、無数の傷が痛むのかたえず顔をしかめていました。
「おいでなさい、直哉」
アマテラスは彼に向かって両腕を開き、自らの下へ引き寄せると、傷を癒やし衣服を清めてやりました。
直哉は畏縮しているのか単に力が出ぬのか、光に包まれぢっとしていました。
「おまえは私を厭わぬのですか」
「…他宗教と仲良くしたり、世界を滅ぼしかけるような女を怨んでもな」
「ふふ、そんなことまでよく知っていますね」
「追放をするのは、気に食わんが」
「礼を失したり家を汚すような弟たちにはしますけれどね」
「だが、おまえは矮小な人間を…俺を、裁いたり呪ったりしないのだろう。だから俺は、あなたに反抗できない」
それはすべて言うとおり。アマテラスにしてみれば、人は人で勝手にやっていればよかったのです。
彼女は生きる人間に矯正などしないのです。私たちは私たち。人間は人間。大切なのはそこにある、営み。アマテラスは度々そういうことを思うのです。
そういう意味ではアマテラスの立ち位置は少々可笑しいのかもしれませんが、それについて言及すると長いので略すのですが、つまりアマテラスのそういうスタンスこそ直哉の気に入るところだったのです。
直哉はしばらくそのまま光輝の中にその衰弱した身体をたゆたわせていましたが、やおら体を動かすと、地に足を付き、縦横無尽に繰り広がる殺戮の痕に降り立ちました。
アマテラスの清き光を受け、妙に尖りのないツヤを、或いはもう乾いたツヤを、晒す、血液。
酸化したソレの鉄臭いこと。
「あいつがやったとは思えんな」
「そうでしょう。コレらはあの子とロキによる惨状です」
「ロキ、だと…」
「意外と言いたげですね」
「…ロキがこんなことをするものか…?」
「そうでしょう。ココに理性はありません。あるのは死骸のみですから。 おまえはロキが本能を露出することが信じ難いのでしょう、直哉」
「…その通りだ。そして、それが本当なら、ロキが理性を忘れるほど、あいつに執心しているということになる。俺には、それが信じられん」
「信じなくても結構。おまえがここまで生き延びた以上、いづれあの子に会うでしょうからね」
「…俺は、あいつを魔王にすることを、諦めてはいない」
「私に言った所で何にもなりはしませんよ。 既に察しているかも知れませんが、しかし、そこには危険がありますね?」
「あいつの精神のことなら危惧している」
「そう。善かった。おまえが危機感を持っていなかったらもう如何にもできないですからね。 けれど、まあ、あの子は正常です」
「そうか、それなら安心だ」
「正常が過ぎて、異常なくらいです。 そもそも以前と比べ周りの環境が限りなく異常な状態で、あの子だけ変わらず正常というのはおかしいじゃありませんか。 この環境が日常になったら、変わらずにいるあの子のほうが異常になるのが道理ではあります」
直哉はアマテラスを見上げ、体は癒えたというのに死のように疲れ果てた顔をしました。
アマテラスは哀れに思いました。
この男さえこの現実に、打ちひしがれ、弱り、重き身を引き摺っているのです。
彼さえここまで堕ちるひどい惨状の真中で私に振り向いて変わらぬ笑顔を咲かせるあの少年は、紛れもなく、確実に異常なのだ。と、アマテラスはその時、静かに気付きました。
そして最後に、直哉の先程の言葉を思い出し、彼を試すことも含意して、ひとつの問い掛けをすることを決めました。
「直哉。おまえは、ロキがあの子に追い縋り本能が儘、無計画に死骸の山を築いたことを、信じられないと言いましたね。
本当の所、信じられないのではなく、信じたくないだけなのではないの?」
直哉は聞いていたのでしょうか、少し身じろぐとアマテラスの方を顧みることもなく身を翻して、その姿を暗い方へと消しました。
天照らす者の光届かぬ所などないというのに。
さて、問の答なら、未だ知る者は皆無です。
直哉が悪魔の変容を信じたくない所以は、少年への独占欲と悪魔への偏執狂のどちらなのか、問うたアマテラスにしても如何でもよいことであり、彼女に大切なのは少年の行方唯一つでありました。
ネクローシス
アマテラスが熱いですね。
ユズルートのナオヤが、コンプ暴走させて楽勝と思いきや、ほうほうのていで逃げ延びたという妄想も熱い。
アツロウとかどこ行ったん。 ねえ
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