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2025/04/20  [PR]
 

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すべっこい手に頬擦りをした。
僅かに目を大きくして、優しく微笑する手の主。
渇きは癒えることを知らず、身を食み続けているけれど、慈しみを誤解するようなボクじゃない。
冷たい夜の匂いから逃げ、彼の部屋に飛び込んではみたけど、艶のある雰囲気はしない。
彼の無垢な笑顔はボクの方まで真白くする。
おかげでベッドの上にいるのにパジャマパーティと相成ったが、彼を見ていると今の空間がなにより大切に思えてくるから不思議だった。
ともかく、「ね。爪、違う色にしてよ」という言葉で彼の爪を塗ることになったのだった。
頬擦りを止め、細い指に触れたところで爪の色が先日ボクが塗ってあげた色のままだと気付いた。
そういえば彼が爪を塗ってなんてボク以外に頼んでいるのを見たことがない。
慎重に手を動かしつつ、もっと慎重に疑問を口に出す。
「もしかして…きみの爪にマニキュア塗るのって、ボクだけ?」
「うん。他の色に塗って貰うまでたまに自分で重ねて塗るくらい」
そういえば最初ボクが月一くらいで塗ってて、いつからか彼が頼んでくるごとに塗ってたけど。
「…いや別に月一しか塗れない決まりがあるわけじゃないから」
「えー」
「だったらボク週一で塗りにくるよ?」
「んー、もっと来て」
「え?」
「毎日でも…ああ、そんな暇じゃないか」
「いや、そんな、ボクいま夜遊び自粛中だから!毎晩、きてあげるよ」
「本当?」
「うん」
しめしめとはこういうときに使うわけだ。しめしめ。
「ねえロキって寝るときもスーツなのか?」
「流石にそんなわけないよ」
「そっか」
「…なぜ脱がせる」
彼は可愛らしい口をぽかんと開けた。
「寝るんじゃないの?」
「はあ?ここで?」
そんなことがあったらすごい嬉しいけど、一体なんでそんな流れなんだよ、と。
「あ、白い爪だ。綺麗に塗れてるね、流石ロキ」
「いや…」
「じゃあ一人で寝る、帰りたきゃ帰れ」
「ああもう正直に言うよここで寝たいなあー!」
「ん、ロキ手超冷たかったし、暖かいオレの部屋で寝た方がいいよ。これから毎晩」
生殺しが得意らしい魔王は真っ白な指でボクを布団の中に引きずり込んだ。
これが季節が変わるとき慣例化してればいいなと思いつつ、指先で彼に触れたまま目を閉じた。




貝殻




白です。
なげえ。
とちゅうからふざけた
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