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2009/02/12)
胸は軋むけど
どっちかっていうと双軋←曲ですが。
曲識が片思いなのも、悪くない。
曲識が片思いなのも、悪くない。
双識は満面の笑みを浮かべて、軋識に近付く。
長い指が怪しげに動く。
「きーししーきくーんっ」
「うわっなにしやがる!」
軋識のビリビリに破れたシャツの下、なめらかな胸を撫ぜる双識の腕。
「うふふふふ、うーふーふーふーしあわせー」
「きもい!離せ!」
繰り出された肘鉄を華麗に交わし、双識は軋識の首筋に顔を近付ける。
「いいにおいーーー軋識くんラブー」
ぞわっと鳥肌を誘発させる気持ち悪さ。
「うわああああああああ」
「ああん」
軋識が死ぬ気で腕を振り払うと双識は思い切り転んだ。
が、振り払われざまに軋識のジーンズをがっしと掴んだ。
「わっ!な…」
「うふふふ…ただでは転ばないよ…」
文字通り。
「変態魂発揮すんな…はーなーせー」
「嫌だね…今晩一発どうですか?」
「だまれ!」
「ワオ!嫌とは言わないのかい!」
「嫌だ!」
「ねえお願いー」
「いーやーだー」
「受け攻めはジャンケンで決めていいから!」
「悲壮な決意だなオイ」
「軋識くうんー」
双識がさらなる誘惑(?)を敢行しようとした時。
「…『止まる』」
「え」
双識の動きが止まる。
「『離す』」
ジーンズから手を離した双識は、無残に床にへばりつく。
「曲識!」
「セクハラはいけない…訴えられたら負けてしまう」
少年、零崎曲識がパチンと指を鳴らすと双識の呪縛は解除された。
「…そうか!直接だと訴えられたら負けだもんね!ありがとう曲識くん!でも邪魔した罪は重いぞ!」
「…『この場から去る』」
曲識の発した命令に従うように双識は規則正しく歩き、部屋を出て行った。
「…おまえが助けに入るとは思わなかったぜ」
「…軋識さん、嬉しくはないのか?」
「あ、ああ!変態から解放されて嬉しいぜ…ありがとな」
一瞬動揺したがそこはもう大人、心底ほっとしたような表情を見せる。
「はい…」
曲識はそれに応えるように口元だけの笑みを作った。
苦笑い。だけれど。
「それは…悪くない」
胸は軋むけど
(気付いてしまった。思い込みではない。きっと違う。そうなら一番、いいんだが。)
苦笑いもさまになって。胸は軋むけど。
柴淳。苦笑いもさまになりますよそりゃあ。
だれか曲識を幸せにしてあげて。
そしてこれ何気なく10年前だ。
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