夜具を温めあう最中さえ政宗の目は焦点を失わずひたすら兼続を見詰め、心から愛を込めて声を嗄らした。
「愛する人はあなただけ」
一夜では関係は終わらなかった。
絡めた相手の指に引っ付いた指輪をしきりにいじるのが癖になる。咎めるように。
日陰を探す
「仕方のないことだった」
地の底から絞り出したような声が政宗の空っぽの頭に響いた。
聞こえてきた情報を寄せ集めるとどうやら兼続の乗っていた車に飲酒運転をしていた車が突っ込んだらしい。
だがもうそんなことどうでもよい。兼続はにどともどってこない。
その場にくずおれた政宗の両肩に手を置いたのは三成であった。
白い扉の向こうではいまだ女の泣き声が途切れ途切れに聞こえている。
「彼女は、兼続を、愛していたのじゃ」
政宗は笑った。
「わしは、最低だな」
三成の腕は、漏らした呟きと一緒に政宗を胸に納めていた。
「俺は…っ俺は妻帯していない、政宗…」
政宗は滂沱の涙を流しながら、その男の心臓の音を聞き、うっそりと微笑んだ。
孫市が電話を終え、家に戻ると政宗は扉に背を向けて赤色のマニキュアを剥いでいた。
「次俺が塗ってやろうか、マニキュア」
「遠慮する」
孫市はふうん、と表情を変えずに言った。
「…ついに幸村たらしこんだのか?政宗、赤は残ってたよな…金は三成で…あと忘れちまった」
「…ふん。幸村はわりと近くに住むことになったから誘ったら付いてきた」
「俺の家だけどなー。……ん、三成とはもう会わないのか?」
「うむ。ここから遠いし、媚びも売り飽きた。まあばったりあったら純情ぶって擦りよってやろうかの」
「所変われば、ってヤツかよ。普通に宿主だろそこはー」
「貴様はいいんじゃろ。秀吉でもオカズにせい」
「普通に無理」
「貴様はダチじゃ」
「おう」
「だから好きじゃ」
言葉のひとつひとつが死への愛情を孕んでいる。
可愛らしいこの女の子が壊れてしまうのは堪らなくて、孫市は政宗の座る椅子に近づいた。
「俺もだぜ、政宗。…だから、泣くときはダチのとこに来いよ。な?」
政宗は立ち上がり、振り向いた。
目に涙をいっぱい溜めて、孫市の胸に頭を押し付けた。
「……兼続が居ないのが、苦しい。わしはいつまでも、止まったままじゃ」
孫市はよしよしと震える頭を撫でる。
「怖いんだよな。…けど俺には政宗を守ることなんてできたことがないだろ」
「じゃがっ、おまえはわしにとって力の一部で、大きな支えじゃった!」
「…だからさ、政宗。今のおまえを守ってくれるヤツもいるんだ。きっと本人はその気だぜ?」
政宗の顔を上げさせ涙を拭くと孫市は彼女の幸せを思い、笑った。
「なんせ前は敵になっちまったし会うこともできなけりゃ、最後俺たちを蹴散らしたあと死んじまうしな」
政宗はぽかんとすると、目で「何言ってんだこいつ」と言わんばかりに孫市を見た。
「おまえは本物と偽物の見分けがつかなくなってるだけさ。あいつに電話してみな、すぐわかる。どうせおまえ昨日幸村と寝たときマジで兼続のこととかなんにも言わなかったんだろ?けどな、いつもおまえが男落とすときは、兼続との死別をダシにすんだ。知ってたか?」
政宗は一瞬ほけっとすると、一瞬深刻な顔になり、一瞬青くなり、一瞬赤くなり、携帯を引っ付かんで外へ出ていった。
孫市は可愛らしい足音を見送ると、携帯の発信履歴の一番上の欄に呟いた。
「さっき俺に伝えた言葉と気持ち、全部本人にぶつけてやるんだな」
そして三成の番号を眺めつつ、こいつには無理だなと改めて思い、政宗が家に居座り始めてすぐに政宗の携帯から三成のアドレスを消して非通知拒否設定しといてよかったなあと溜め息をついた。
「あいつが欲しければ今度こそは真心を捧げてみるんだな」
そして携帯を閉じた。
これ幸政じゃないよね。ううんさらりと書きすぎた。
深読みのためか、怠惰か・・・。
兼政で三政で幸政で孫v政
兼政は不倫で死別で、三政はつけこみ系、幸政は情熱の人と気づかない人、孫市と政宗は清純な友情でらぶらぶです。でも孫のしゃべり方わかんない。
自暴自棄政宗なんです。
さあ三成はどう出るか。
何股してんだかわかんない政宗。どの男にもマニキュアを塗らせる政宗。もえ。
だけど本当は幸がすき。だがそんな伏線誰が張ってやるものか!!!
限られた文字数で妄想を広げたかった。
深読みするというのが口実の怠惰文で正解。
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