(
2008/12/12)
いしき
兼政。
なんか変。文字でかくしてみた
なんか変。文字でかくしてみた
政宗と兼続は、仲が悪い。非常に悪い。顔を合わせれば口喧嘩。戦場で出会おうものなら問答無用、本気で殺しにかかる。
とにかく周りがうんざりするくらい、毛嫌いしあっている。
と、お互い思っていた。筈でした。
ところで、その酒の席は太閤秀吉が主催し、諸大名や、太閤が一目置くその部下が招かれました。
大大名上杉家の重臣で現当主の親友である兼続もそこへ招かれようことは周知でした。
だけれども、伊達家当主伊達政宗が来ないとは誰も思いませんでした。
「あー政宗なら具合悪くて屋敷で休んでるぜ。早く呑もうぜ秀吉ぃ」
代理で来たという孫市が杯を片手にそう告げた時、聞いていた誰もが目を剥いたものです。
兼続はというと、もとより政宗と口論することを覚悟、想定し、ここ2、3日は政宗の顔がずっと頭にあったような有様だったので、肩の力が一気に抜けました。なぜかは本人も分からないようですが一瞬本気で意気消沈しました。
でもその席には親友たちがいたのでそれなりに呑み、酔い、語り合い、楽しんだのでした。
でも兼続は心の中が荒れているのを感じました。満たされない感じ。
焦燥感とでもいうのでしょうか。不思議なものです。兼続には己が心中がここまで解らない事が怖くもありました。しかし理由が解りません。
誰かにこの心情を打ち明けたくもありましたが、恥かしさと言葉にできなさすぎるのがあいまって、兼続はのち暫く、何かに駆り立てられているような気持ちに苛々しながら孤独を味わうことになるのでした。
数日後の暮れ時ことです。そんな兼続のもとを政宗が訪ねて来ました。
いつもなら顔を付き合わせた所で口から勝手に雑言が飛び出すのですが、兼続はそんな気分になれません。
そして政宗もいつものように尊大な態度でなく、静かに張りのある声で言います。
「酒でもどうだ。なに、毒などは入っておらぬわ」
わしの酔狂じゃ。と最後だけ吐いて捨てるように言いました。
政宗は酔狂を唐突に起こすことなどはなかなかありません。ましてや嫌いな人間など、目に映すのをさえ嫌がることもしばしばです。ではどうしたことでしょう。
とにかく兼続と政宗は呑み始めました。
するとどうでしょう。兼続の寂しさは無くなって行ったのです。政宗と会話を交わすごとに苛つきがまるで嘘のように消え去るのです。
夜分になりました。共通の話題がある訳ないと思っていたのに話は続きます。すると今度は兼続の心は疼き始めました。
体にも疼きが伝わります。咄嗟に兼続は政宗を抱き締めました。酒の勢いでしょうか、いつもの兼続なら我慢できた疼きかもしれませんが、今はどうしても無理でした。
政宗もお酒が回っているので体がやけに熱く、涼しげな空気の中でその小さな体を抱くことはとても心地よいものでした。
「政宗」
彼の腕が兼続の背中にゆっくりと回されます。その手のひらにきゅうと、力がこもります。
「…何故か貴様がいないと万事調子が悪くて、困るのじゃ」
「私も、同じだ」
政宗は兼続の胸に顔を埋めたままです。兼続は彼をより一層強く抱き締めました。
彼がいとおしいのです。
意識
なにこれ
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