きみが笑うとあの子は笑う。
そしてあの子はきみを抱き締める。
そして冷たく笑うのだ。
期待や思念を無為だとせせら笑う感受性に乏しい賢者のように。
待望や信念を無駄だと嘲り笑う数字以外を侮る学者のように。
ただそれは、抱擁に浸かるきみにはけして見えない。
色眼鏡の至福
政宗はとっくにきちんとわかっていた。
もう幸村の気持ちは自分に向くことはないと、もう彼にとって自分は透けていると、十分に知っていた。
だから終わりに誘導する。
悲しみは変わらず政宗の背中の辺りを這いずるばかりだけど。
重い静寂に黙る幸村に顔をしかめてみせ、政宗はやっと口を開いた。
「見抜かれていないとでも思っていたのか?」
幸村が身動ぎする。
「それともわしにわざわざ見抜かせたのか」
見え透いた言動でわざと知らしめたなら、なかなかどうして幸村は性悪に思える。
そうなら嬉しいけど。 政宗は言葉にせず吐息と供に宙へ放った。
惨め過ぎた。
とはいえ、見え透いた嘘で政宗に嫌わせようとしたなら、それは優しさ。
愛有り余る最後の優しさ。
すがりつきたくなる優しさ。
終わり始める前と同じに政宗は胸を時めかせる。
けれどそんなものはもう必要ない。
もう愛されていないと思い知れればもうなにも求めない筈だから。
どうか優しくわざとらしい言い訳だけ置いていってくれと心から願った。
幸村は口を歪めた。平生偽りなど苦手な男なのだ。もしかすると嘘をついたことさえないかもしれない。
そんな潤色を、政宗は汚すのだ。
「…あなたには、私はもう…必要、ない、でしょう。だから…私は、彼を選びます」
彼。
あの冷笑が浮かぶ。
「彼には、私が必要なんです」
彼。
幸村を抱き締めて物欲しげな子供のように笑っていた、彼。
人のものすべて欲しがる幼児のようでいて、そのくせ普段が冷静だから、欲しいものに自分を特別と勘違いさせる者。
不要なものは躊躇なく捨てる吝嗇な者。
愛情と同情は自らの腕の中のみに注ぐ卑劣な者。
政宗にはそういう人物にしか見えない。
ただし政宗は幸村を否定できない。
「わしといればずっと幸せだったのに、貴様は、それでも、」
政宗は込み上がる喉の痛みをぐっと圧し殺すと、顔を押し上げてどこか安堵したような光を帯びた、彼の目をもう変えれない自分を悲しく思い、その目に恨めしげな眼差しを投げつけた。
そして、もっと打ちのめしてくれないと足りないよ、と言う代わりに自嘲気味に笑った。
今やそれさえ通じない。
彼にとって彼は、もうただひたすら透明だったのですから。
明日から気兼ねせずあの子に会うためにそこまでするあなたにほほえんであげたの。
い、いっとくけど最後のオブラートはわざとだからねっ。彼にとって彼は。
ていうかこの幸村殴りたいですね。羨ましいのだよ!幸村は別れを切り出さないイメージなんだ。
あいまいにわかれることにされて、政宗の苦しみといったらガクガク。
ところで幸村が惚れてしまったのは誰でしょう。…わたしは三成だと思います。あ、モロバレか。
政宗を幸せにしたい人挙手。わたしだけ?あ、あなたも?
いちおう反抗期過ぎかけの2の政宗なんだけどなんだかしおらしくなっちゃうよ。うぬん。かわいそう。
タイトルの下にある曲の歌詞は柴田のひろみですー。好きなんだ!妄想しちゃったんだ!!
とはいえ、ってなんかいいね。詩的になりすぎないし。
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