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2025/04/20  [PR]
 

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「そうだ、ナオヤくんの魂をもらおう」
男は目が覚めるなり軽快と陰険と軽薄と暗澹と愉快と残酷と気楽と瓦解と愉悦と惨憺をひっ絡めたような声で言い放ち、記憶の中の彼女の輪郭を魔力の残光の残った瞳でなぞった。
あの薄い背の頼りなさ、鍵の上を踊る指の細長さ、凶暴な外気に晒された首の青白さ、桃色をした唇の淡さ、白い睫を縁取る影の儚さ、(すべて、抱き締められれば、幸せ、だろうと思われるが、違うだろうか、愛しいひと。)
男は絨毯より身を起こすと彼女がいるであろう寝室の扉に目を向けたが、そこに彼女の気配がないことに気付き、ふいに聴こえたシャワーの音に、ああ、と頷いた。
成る程彼女は男が寝こけているのを見て朝シャンと洒落込んだ訳だ。男の行動は早かった。彼はタイを解くと枕にしていたジャケットの上に投げ、シャツの釦を外しつつ洗面所へ向かった。
何事かを考えているでもない。
今一向に彼女を抱きしめんと欲する腕の望むままに扉を開けた。




赤く染む生布



痩せた裸身を後ろから慈しむように抱きすくめ、先程の言葉を囁くと、彼女は赤く色づいたままうつむいて泣いた。
(最早嬉しいか悲しいかの判断すらつかないこんな白痴をつかまえてどうしようというの、)








まあ、短く。
純情か病気かわからない行動はよくある。
生布。
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