(
2009/02/12)
シンデレラ
軋識→←舞織
軋識が考えすぎだからいけないんだと思う。
軋識が考えすぎだからいけないんだと思う。
シンデレラ
口からは嘘しか出てこない。嘘しか言えない。これは、きっと、嘘だ。
だって、事実なのだ。
いくら舞織のことを好きでも。慈しんでいても。
軋識が暴君と呼ぶあの少女に崇拝に似た気持ちで、恋心を抱いているのは確かだから。
「ごめん」
軋識を映していたガラス玉のような瞳が曇る。
「…もう、いいです」
舞織が部屋を飛び出しても、軋識は追わなかった。
悪かったのは自分だし、止める権利はない。
止めた所で自分が彼女にできることはない。
引き止めて抱き締めたいけれど、その願いは永遠に叶わないと、彼女の軽やかな足音が告げていた。
「軋識さん…」
少女、舞織はなるべく足音が軽く聞こえるように歩く。
「不思議だなあ」
落ち込んでいる自分を紛らわさせたいのだ。自分に言い訳をする。落ち込んでなんかない。落ち込んでなんかない。
「こんなに、好きなのになあ」
彼が他に思いを寄せている人に負けないくらい好かれているはずなのに。
引き止めて、抱き締めてくれたら。それだけで彼に夢中だった筈だ。
それだけ彼を思えたら、彼に自分を一番にさせることも、きっときっとできた筈だ。
「…好きなのになあ………」
彼は、追ってこない。
舞織は足を止める。
数秒。
数十秒。
彼は、追ってこない。
最初で最後の試みは、見事に失敗。
あーあ。
PR